前回の記事:お茶×チーズ? お茶×チョコ? 欧州の革新的な「日本茶」スタイルとオーガニック日本茶《ヨーロッパのオーガニック事情》

「ヨーロッパのオーガニック事情」第4弾としてお送りする今回は、ヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェ特集。

オーガニックへの意識が高いヨーロッパには、オーガニックの食材を使用したメニューが楽しめるレストランやカフェにたくさん出会えます。

今回はヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェの様子を、アイルランド・スペイン・イギリス3つの例を通してご紹介。

この3カ国では、首都など都心部だけでなく地方にも、地元の農場から採れる野菜などをメニューに活かしたオーガニックレストラン&カフェが見つかります。

さらに、日本(東京)でもヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェの雰囲気・味が楽しめるお店情報も掲載。

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ヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェの様子は?

それではまず、ヨーロッパでオーガニックメニューが楽しめるレストラン&カフェの様子を「味・価格」「オーガニック食材使用基準・割合」「肉・魚料理」の3つの視点からお伝えしましょう。

日本とは逆? 野菜料理は濃い味付け

著者自身の主観ですが、例えばオーガニックの乳製品を使用したメニューは通常のものよりも控えめでまろやかな味な一方、オーガニックの野菜・果物使用のメニューは味が濃く凝縮された仕上がりになっていると感じます。

また価格に関して、オーガニックの食材を使用したメニューとそうでないものには、そこまで差がない印象を受けます。

例えばオランダ・マーストリヒトのバーガーレストランBurgerlijk Restaurantでは、オーガニックの「Pulled Pork(プルドポーク:豚肉の塊をBBQスモーカーでじっくり時間をかけ低温調理し、それをほぐしたもの)」バーガーが他種類のバーガーと変わらない値段(8ユーロ)で提供されています。

コーヒーに関しても、後に紹介するLEON(イギリス)のオーガニックカフェラテが2.40ポンドなのに対し、大手チェーンCosta Cofeeのカフェラテの値段は2.15ポンド(小サイズ)・2.65(大サイズ)とほぼ変わらない価格です。

日本と比較して価格差がぐっと抑えられている理由は、やはりヨーロッパにおいて食品を含むオーガニック商品・製品に対する消費者意識が高いことが大きな要因でしょう。

農薬や遺伝子組換え食品などが健康に及ぼす影響(食品アレルギー等)、そのほか、エコロジカル(環境保護)や「動物愛護」「フェアトレード」などエシカル(倫理的)な価値基準を持つ消費者の数が多い=オーガニック商品・製品への需要が高いことから、それらが手に入りやすい価格で出回り、レストランやカフェで提供されるオーガニックメニューの価格にも影響していると考えられます。

店によってオーガニックのランクが異なる

ヨーロッパには「EU Organic Label」という商品認証ラベルがあり、この認証を受けるためには基本的に原材料の95%がオーガニックでなければなりません。

一方、カフェやレストランでのオーガニック食材の使用割合はそれぞれの店で異なります。

オーガニックカフェ・レストランと謳うためのひとつの基準として、イギリスの有機認証機関「Soil Association」が設ける「Organic Served Here」という賞が参考になります。

使用するオーガニック原材料の量によりランクが異なります。

95%〜100%使用していれば最高の5つ星
75%〜95%使用=4つ星
50〜75%使用=3つ星
25〜50%使用=2つ星
15〜25%使用=1つ星

の認証がもらえるという仕組みです。

例えば(後ほどご紹介する)スペインのオーガニックカフェ「OhBo organic cafe」は使用食材の95%をオーガニックが占めていますし、オランダ・アムステルダムにあるカフェ「De Peper」やデンマークはコペンハーゲンの「BOB Biomio Organic Bistro」は100%オーガニックの食材を使用したメニューを提供しています。

こういった95%以上のオーガニック原材料を使用している店舗は「オーガニック」を全面に出していますが、先に紹介したバーガーレストラン「Burgerlijk Restaurant」や後ほどご紹介するイギリスの「LEON」など、「オーガニック」がメインでなくとも肉や魚類を含むオーガニックメニューを提供するカフェやレストランは多く存在します。

日本にはない「オーガニックの魚」って?

オーガニック・有機の肉類(加工品を含む)は日本でも展開されていますが、オーガニック魚、いわゆる有機魚類は見かけません。

日本のオーガニック認証「有機JAS認証」に含まれるのは「農産物、加工食品、 飼料および畜産物」で、水産物はまだ含まれていないのです。

その点、ヨーロッパではオーガニックの魚介類も多く出回っており、全体の大半を占めるサーモンのほか、トラウト(鱒)・エビ・海藻・牡蠣やムール貝など種類に富んでいます。

オーガニックの魚とは、オーガニックの基準を満たす環境で育てられた養殖魚のことを指します(※さまざまな環境下で育つ天然の魚は「オーガニック」ではありません)。

イギリスの有機認証機関「Soil Association」によると、オーガニック魚と一般的な養殖魚で異なる点は主に次の4つです。

・養殖所(プール)の密集率が低い

自由に動けるスペースが確保されており、魚にかかるストレスが少なく済む。

・オーガニック&ナチュラルなエサを食べている

一般(ノンオーガニック)の養殖魚のエサは油やプロテイン代替品だが、オーガニックの魚にはサステイナブルな養殖所でオーガニックの植物性・動物性のエサを食べて育った魚が与えられる。

・病気や感染症にかかるリスクや寄生虫の発生を抑えられる

・誕生から食用になるまで、魚にとって極力ストレスや負担のかからないライフサイクルの提供が可能

ヨーロッパではこういったオーガニックの魚使用のメニューを提供するレストランやカフェに遭遇します。

例えばアイルランド・ダブリンにある「Farm Restaurants」ではタラと一緒にオーガニックサーモンを使ったフィッシュパイやオーガニックサーモンのグリル、またイギリス・スカイ島のレストラン「Sea Breezes Restaurant」ではオーガニックのスモークサーモンやニジマスを使用した料理が振舞われています。

(Farm Restaurantsのオーガニックサーモン↓)

(有機魚類を使った、Sea Breezes Restaurant↓)

また、オーガニックの魚はスーパーでも手に入ります。

オランダの大手スーパー「Albert Heijn」ではオーガニックサーモン(切り身・スモークサーモン)とむき海老が販売されており、ノンオーガニックとの価格差はおよそ0.60ユーロ(約80円)〜2ユーロ(約260円)ほどです。

旅行するなら行きたい! 欧州でホットなオーガニックレストラン&カフェ

次にヨーロッパで人気のあるオーガニックレストラン&カフェの具体例について見ていきましょう。

ショップ&カフェ&農場「The Happy Pear」(アイルランド)

はじめにご紹介するThe Happy Pearは、アイルランド・ウィックロー州(ダブリンの西に位置)で双子の兄弟 DavidとStephen Flynnによって2004年に設立された、オーガニックカフェ&ショップです。

DavidとStephenは大学を卒業後、2年半ほど世界を旅し、さまざまな食文化を体験しました。

帰国後、人々に健康的で幸福感のある食生活を紹介・提供したいとの思いから、当初は小さな八百屋として「The Happy Pear」をスタートさせました。

その後は主に口コミ中心に評判を上げ、現在、ウィックロー州の生産所と農場に加えて、3つのカフェ&ショップ(ウィックロー州2店舗、ダブリン1店舗)を運営するまでに成長しました。

設立から14年が経った今も、双子の両親と弟を含む家族経営のブランドとして、信念に沿った地道な活動を続けています。

エンターテイメント性を備えるThe Happy Pearのこだわり

The Happy Pearのカフェ&ショップが提供するのは、オーガニック&ナチュラルな食材を使用したベジタリアンメニュー。

ストイックなイメージは一切なく、作り手が情熱を持って楽しくメニュー開発に取り組んでいる様子が伝わってきます。

カフェでは自家製グラノーラやココナッツヨーグルトなどの朝食から、スープやカレー、ローストした人参をスライス&マリネして作る「ヴィーガンスモークサーモン」を使用したサンドイッチ等の食事を提供。

甘味メニューも充実しており、「ヴィーガンクリームチーズ(豆乳ヨーグルトが原料)」使用のコーヒー&ウォルナッツケーキ、ブラウニー、ヴィーガンクロワッサン、ヴィーガンスコーンなどさまざまな種類のスイーツが揃います。

The Happy Pearの活動は独自のYouTubeアカウントをはじめ、Instagramなど数々のソーシャルメディアにて発信されています。

10年に及ぶ経験の集大成として作られ、大成功を収めた初のレシピ本「The Happy Pear」、続く第2弾「The World of the Happy Pear 」、第3弾「Recipes for Happiness 」(未翻訳)も必見です。

 

レストラン「OhBo organic cafe」(スペイン)

スペイン・バルセロナにあるOhBo organic cafeはメニューに使用している食材の95%がオーガニック。

さらに可能な限りフェアトレードのものや、地元の生産物を使用するよう心がけています。

OhBo organic cafeで提供される料理やスムージーは、オーガニックな食材が体に活力を与えてくれるのと同時に、その美味しさで食べる喜びも満たしてくれます。

使用食材の95%がオーガニック! 充実のブランチメニュー

ブランチメニューが特に充実しており、スモークサーモンとアスパラガスを添えた、オーガニックの卵使用の目玉焼き(またはスクランブルエッグ)や、話題の健康フード・チアシードをトッピングしたヨーグルト、季節のフルーツとメープルシロップをトッピングしたフレンチトーストなど、さまざまな品が揃います。

食事メニューにはスイートチリ味の海老餃子も!

イベントやケータリングなども行なっているほか、OhBo organic cafeのウェブサイト内のブログ(※スペイン語)ではオーガニックの食材やコーヒー、オーガニックコットンにいたるまで詳しい情報が紹介されており、とても勉強になります。

OhBo organic cafe のインスタグラムでも、店内の様子やメニューが美しい写真を通して紹介されています。

ぜひチェックしてみてください。
 

ファーストフード「LEON」(イギリス)

LEONはイギリス生まれのファストフード・レストランチェーン。

中近東にルーツを持つJohn Vincent と Henry Dimblebyにより、2004年に設立されました。

往来のファストフードのイメージとは異なる、オーガニックを含む厳選材料を使用した健康志向のメニューで、年々確実にファンを増やしています。

イギリス国内の店舗数は34店舗に上り、海外では2016年にオランダへ進出。

アムステルダムのスキポール空港内に2店舗、オランダ中央部に位置する都市・ユトレヒトに1店舗を設けています。

世界の主要都市全てにLEONの店舗を構えることを目標に据え、現在も進化を続けています。

LEON創設者のJohnとHenryは、サステイナブルな方法で食材調達を行い、地元のコミュニティとの関わりを持つことで、飲食店が地球環境へ及ぼす影響を管理できるようサポートする団体「The Sustainable Restaurant Association (SPA)」の共同設立者でもあります。

LEONはこの団体から、クオリティの高さを保証する2つ星を獲得しています。

ファストフードもオーガニック志向! LEONこだわりの食材たち

「The future of fast food」と称されるLEONのメニューには、中近東にルーツを持つオーナーの影響で、フルーツ・野菜・未精製の穀類などを中心とするミドルイースタン料理のスタイルが色濃く反映されています。

さまざまなニーズに対応できるよう、グルテンフリー・ベジタリアン・ヴィーガン・小麦フリー・低血糖負荷食・ナッツフリー等のメニューも常備。

ベジタリアンメニュー(全体の65%)&ヴィーガンメニュー(全体の31%)の他はほぼ魚や鶏肉を使い、赤身の肉の使用を最小限に抑えています。

メニューに使用している原料からも、そのこだわり用が伺えます。

ハチミツはイギリス・ウェールズ産のオーガニック・ローハニー(raw honey)、魚(鱈・スモークサーモン)や鶏肉は信頼できる生産者から仕入れています。

また、スペイン・カタルニアの工場から届くチョリソーの原材料は豚肉・ニンニク・カイエンペッパー・パプリカ・塩・コショウの6つのみ。

加工肉食品の製造過程で一般的な硝酸処理は行われておらず、塩分の量も低めに抑えた、安心していただけるチョリソーです。

コーヒーは全てオーガニック&環境問題にも配慮

さらにLEONが提供するコーヒーには、全てオーガニック&フェアトレードのアラビカ豆が使用されています。

カフェラテなどに使用されるミルク(イギリス産)&アーモンドミルクもオーガニックのもの。

また紙製のコーヒーカップは生分解性でリサイクル&堆肥への変換が可能で、コーヒー豆のカスは再生可能エネルギーに変換されるという徹底ぶりです。

今後はコーヒー豆の焙煎所をイギリス国内に移し、フード・マイレージを最低限に抑えようとしています。

また、ヘンプシード(麻の実)から作られた植物性ミルクをメニューに取り入れる企画も進行中です。


 

レストラン&カフェ「ローズ・ベーカリー」(イギリス・東京)

東京でヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェ体験!

ヨーロッパだけでなく、今度は日本にいながら同様の雰囲気と味が体験できるお店ローズ・ベーカリーについてご紹介しましょう。

ローズ・ベーカリー(丸の内、銀座、新宿、羽田空港)

東京内に5店舗を構える「ローズ・ベーカリー」は1998年、Rose Carrariniとその夫Jean-Charlesにより、ロンドンで小さな食料品店「ヴィランドリー」としてスタート。

2002年にはオーガニックレストラン&カフェ「ローズ・ベーカリー」に名を変え、パリへの出店を果たしました。

その後もビジネスは成長を続け、現在はパリ・ロンドン・東京のほか、ソウルとニューヨークにも店舗を構えています。

オーガニック食材を使用したキッシュ等の食事メニューや、ケーキやスコーンなどの焼き菓子の数々は、素朴ながらも繊細な味付け。

厳選した素材で丁寧に作られたことが伝わってきます。


数あるメニューの中でもおすすめは、コロンとした見た目もかわいい「キャロットケーキ」。

濃厚なクリームチーズのアイシングが味のアクセントになり、つい2つ目にも手が伸びてしまいそう。

ローズ・ベーカリーでも1番の人気商品です。

(↓人気のキャロットケーキ写真)

Rose Carrarini著のレシピ本『BREAKFAST LUNCH TEA / ブレックファースト・ランチ・ティー』、第2弾の『HOW TO BOIL AN EGG / ハウ トゥー ボイル アン エッグ』もおすすめ。

ローズ・ベーカリーが辿ってきたストーリーも語られており、レシピを参考にするほか読み物としても楽しめます。

2冊ともインテリアとして飾っても様になる、美しい装丁が印象的です。

肩の力が抜けた、無理のない「オーガニック」のかたち

ヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェの様子や、日本で楽しめるオーガニックカフェ体験についてもご紹介してきました。

日本で「オーガニックレストラン」「オーガニックカフェ」というと、「オーガニック」を前面に打ち出し少々ストイックなイメージがあります。

しかし、ヨーロッパでは(今回ご紹介したように)100%オーガニックの食材にこだわるお店から、一部にオーガニックメニューを設けているお店、食べ物はオーガニックではないけれどコーヒーはオーガニック&フェアトレードにこだわるお店など、さまざまな形があります。

また日本でオーガニックというと野菜や果物がメインで、オーガニックの肉類(畜産品)は販売されているものの、価格が高いこともあって普及が進んでいるとは言い切れません。

ヨーロッパでも日本と同様、オーガニック商品を購入するのは女性(主に30・40代)の割合が多い傾向にありますが、生活の中でオーガニック商品にアクセスしやすいこともあって日本のように「オーガニック商品の消費者=健康志向の女性」というイメージは特に存在しないように感じられます。

肩の力が抜けていて、特定のイメージにとらわれないヨーロッパのオーガニックレストラン&カフェ。

いずれ日本の暮らしにも自然な存在として「オーガニック」が根付くと良いなと感じます。
 

 

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