日用品で欠かせないもののひとつといえばシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品。

最近ではお店に行くとオーガニックや植物由来のもの、また海外製品も多くみかけるようになり、オーガニック化粧品市場はますます盛り上がりを見せています。

ところが、日本製のヘアケア製品をはじめ、化粧品に明確なオーガニックの基準がないということはご存知でしょうか?

食品に関してはJAS法により「有機JAS」が厳しい基準が設けられているため、食費者が口にするオーガニック食品は確実に安心・安全なものと認識している人は多いと思います。

海外の場合は食品だけでなくコスメでもエコサート認証をはじめ、アメリカならUSDA、オーストラリアのACOなど欧米中心にオーガニックコスメティックの基準が設けられており、認証がないものはオーガニックとうたうことはできません。

国内の店頭で販売しているオーガニックシャンプーは一体、何をもってオーガニックとうたっているのでしょうか。

今回は、長年美容室専門のメーカーでヘアケアの研究・開発に携わり、ご自身でも数々のシャンプーを試してきたという開発者の沢田あかねさんにお話を伺いました。

ノンシリコンが流行っているが、実はそこまで悪いものではない?


はじめまして。

ヘアケア製品を研究・開発しております沢田あかねです。

この業界に入って数年経ちますが、一般に出回るへアケア製品の情報について間違ったまま広まったり、まだ知られてない事も多いと日頃から感じておりました。

そこで今回は、みなさんにオーガニックをはじめとしたヘアケア製品について正しい知識を持ってもらいたいと思いお話させていただきます。

まずは、一般的なシャンプーとトリートメントに含まれる成分をご説明しておきましょう。

一般的なシャンプーは水、洗浄基剤、洗浄補助剤、粘着剤の4つの成分で主に構成されています。

洗浄基剤は、シャンプー剤の主体となる部分で汚れを落とす成分。

洗浄補助剤は、泡立ちを保つために洗浄基剤を助ける役割を担います。

コンディショニング剤は指通りを良くするための成分で、粘着剤は界面活性剤を安定化させます。

トリートメントは、水のほか、主にカチオン(陽イオン)界面活性剤、コンディショニング剤で構成されています。

一時期、ノンシリコンシャンプーなどのノンシリコン製品が話題になりましたが、シリコーン(一般的には、シリコンと言われていますが、正しくはシリコーンと表記します。以下、シリコーン)はトリートメントのコンディショニング剤に属し、シリコーンのヘアケアでの効果は、毛髪同士の摩擦係数を下げ、物理的なダメージを軽減します。

また、毛髪にツヤやしっとり感、サラサラ感などの質感を付与します。

一部のメディアやインターネット上で、シリコーンは抜け毛や頭皮へのダメージの原因になるのではないか、と間違った認識をされていますが、実は髪や頭皮に悪影響を引き起こすという研究データはないのです。

ではなぜ、シリコーンが髪に悪いものになったのか。

美容師さんの間でシリコーンが入ったトリートメントを使用した髪はパーマ液が入りにくいという話があり、それが噂で広がりシリコーン=髪に悪いものとなったのかもしれません。

シリコーンはその有用な機能から、多くの化粧品メーカーで使用しております。

化粧品だけでなく、コンタクトレンズ、調理器具、日用品の様々な分野で使用されていて暮らすうえでは欠かせないものです。

ただし、シリコーンは人工物ですので、オーガニックの概念からするとふさわしくない成分かもしれませんね。

以前、ジョンマスターオーガニックの製品で、表示していた成分と実際に使用されていた成分が全く異なり、メーカー側が謝罪したニュースがありました。

トリートメント剤ではシリコーンフリーをうたいながら、実際にはシリコーンが入っていました。

ヘアケア業界でも、「記載されている配合成分だけではあの製品は作れない」と噂になっていたのでニュースを見て「やはりそうだったのか」と納得しましたが、いかにシリコーンが使用感や仕上がり感を考える上では重要な役割を担っているかがよく分かる出来事でした。

「オーガニックヘアケア製品」と言っても内容はさまざま

オーガニックのヘアケア製品を使用すること自体はとても良いと思います。

まず、自分たちが使用している製品に対し、興味・関心を持つことはとても素晴らしいことだと思います。

そういったお客様が増えてきたことで、私たちメーカー側もよりいっそう製品の安定性や皮膚刺激のリスク、原料の由来に対し真剣に取り組むことが出来ました。

ただ、インターネットの普及にともない、先ほどのシリコーンのように間違った情報が非常に多く拡散しています。

また、「オーガニック」とうたっている製品でもいくつか種類に分けられます。

①海外の認証を受けている製品

②各社のオーガニック基準に沿っている製品

③添加されている植物エキス等がオーガニックで、ほか主成分は通常の原料を使用している製品

一概に「オーガニック」の製品と言っても認証を得られているものと、添加されているだけの製品とでは大きく内容が異なります。

添加されているだけの製品が悪いとうことではありませんが、お客様が求めているものと実際がどの程度合致しているのか疑問に思うところもあります。

基準がないため、オーガニック成分は1%以下の製品も出回っている

薬事法の改定により、化粧品の全成分表示が義務つけられました。

化粧品のパッケージの裏を見ると、その製品に使用されたすべての成分が使用量の多い順に表示されていますが、1%未満は順不同です。(キャリーオーバー成分に関しては記載不要、薬用化粧品の表記義務は例外)

また、成分表に量までは記されていません。

ここでなにが言えるかというと、ほんの少しのオーガニック成分の配合でも「オーガニックエキス配合」と表示できてしてしまい、あたかも製品がオーガニックの基準を持っているかのような誤解をあたえてしまうということ。

日本は食品に関しては「有機JAS」という明確な有機基準がありますが、残念ながら日本の化粧品にはオーガニックに関する明確な基準はありません。

それでも「オーガニック」が注目されているため、化粧品業界でもオーガニックとうたう商品は多く存在します。

認証を受けている製品や自社基準を明確に表示している製品以外の多くは「オーガニック成分を一部に配合」しているだけでのものが大半を占めています。

コストやパフォーマンス、安定性を考える上でオーガニック成分を主成分とした商品を開発するというのははっきり言って難しいのが現状です。

多数あるオーガニック製品の中でも企業努力を行い、パフィーマンスや安全性をクリアした製品を作っているメーカーはありますし、そういった企業は本当に素晴らしいと思います。

オーガニック認証がついていても日本ではタブーとされている成分がある

以前「茶のしずく石鹸」を使用した人が、全身性のアレルギーを発症した事故がありました。

あの一件以来、日本では小麦成分を使用した化粧品はほとんどなくなりましたが、海外製の化粧品の中には「加水分解コムギタンパク」等、として小麦由来の原料が使われている場合もあります。

このように海外のオーガニック認証を取っているもので、いくら原材料が有機農産物であっても、日本では良しとされない原料が使われていることもあります。

また、日本の薬機法では使用禁止されているが、海外では使用されている成分もあります。

「加水分解コムギタンパク」は禁止成分ではありませんが、パッケージに小麦を原料としている旨を表示する義務があります。


(編集部が見つけたオーガニック認証付きの輸入シャンプー。パッケージには小麦を原料の表示がないためこれは違反にあたる)

通常、輸入化粧品の成分については輸入販売を行う会社の製造販売業者が日本の薬機法に沿って、安全性を十分に確認したうえで販売を行いますが、個人輸入サイトから購入したものなどは注意する必要があります。

「認証があるから……」と過信しすぎるのではなく、自分の目でしっかりとどんな成分が入っているのかを理解することも大切です。

オーガニックをはじめとしたナチュラルヘアケア製品にもデメリットはある

オーガニックに限らず、ナチュラル成分のみ使用しているからといって、それが個人の肌に合うか否かは一概には言えません。

一般的に刺激があるとされている成分だけでなく、たとえオーガニック成分であっても個人によってはアレルギー反応を起こすことがあります。

また、オーガニック原料は人工原料と異なり、精製行程が少ないことがあります。

そのため、不純物が多くはいっている可能性や、気候や時期によっては成分(表示されている成分ではなく、構成成分)が異なる場合もあります。

オーガニック=万人に刺激がない、肌に合う、毛髪に合う製品ではないという認識を持っていただきたいです。

最後に、良いオーガニックヘアケア製品を見分ける方法をよく聞かれますが、それぞれ求めているものや肌質が違うので一概にこれがいいとは言えません。

まず自分がどういった製品を求めているのかを明確にして、メーカーのオーガニックに対する理念が自分にあっているのか、認証を得ている製品なのかなどで検討するのが良いと思います。

あとは実際に使用してみて自分の肌に合っているものを選ぶといいでしょう。

 

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